- そもそもインボイス制度って何?
- フリーランスにどんな影響があるの?
フリーランスに影響を及ぼすインボイス制度が、2023年から適用されます。
何だか難しそうだけど、それってフリーランスに何か影響あるのかな?損するの?どうしたらいいの?
など、さまざまな疑問が出てきて戸惑っている方も多いのでは?
この記事では、フリーランスなら知っておきたいインボイス制度について、わかりやすく解説していきます。
今のうちから準備しておくべきことも、合わせてお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。
- システムエンジニア歴10年以上
- 会社勤めに限界を感じて、エンジニア兼Webライターのフリーランスとしてキャリアを再スタート
- フリーランス歴5年
- 現在はオウンドメディアのディレクター、エンジニア、ライター
Contents
2023年から適用されるインボイス制度とは?

「インボイス制度」の正式名称は「適格請求書等保存方式」です。「インボイス」とは、「適用税率や税額の記載を義務付けた請求書」を指します。
この制度は、消費税が10%に引き上げられたが故に誕生した制度です。
ここからは、インボイス制度によって、何が変わるのかを解説していきます。
インボイス制度をわかりやすく説明すると…
インボイス制度のポイントは「消費税」です。
業種にもよりますが、今までは年間の売上が1,000万円未満のフリーランスは「免税事業者」となるため、消費税の納税は免除されていました。
しかし、インボイス制度が導入されると、今までは免除されていた消費税の納税が必要になる可能性がでてきます。
このインボイス制度自体が、まだまだ認知度が低いのが現状です。
2021年8月の財経新聞の記事によると、インボイス制度を理解しているビジネスパーソンは現時点で半数以下の42%と言われています。
何らかの対策が必要と感じてはいるものの、準備ができていると回答した企業はわずか23%にとどまっています。
また、インボイス制度導入後のフリーランスとの取引については、6割以上が不安に感じているようです。
認知度や理解度が低い現時点では、企業側もフリーランス側も不安に感じていることが伺えます。
そもそもインボイス(適格請求書)の仕組みとは?
まずは、インボイス制度導入後の消費税の納税について解説します。
A社→B社に100万円分の商品が納品されました。すると下記の通りの請求書が発行されます。
100万円(商品代金)+10万円(10%の消費税)=110万円
A社はこの商品の材料をC社から50万円で仕入れていました。
C社→A社には下記の通りの請求書が発行されます。
50万円(材料費)+5万円(10%の消費税)=55万円
C社→A社から発行された仕入れの請求書が「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出して登録した人や会社(ここではC社)が発行する「適格請求書」です。
インボイス制度導入後は「適格請求書」が発行されると、A社はC社が発行した「適格請求書」に記載されている消費税を差し引いた金額を納税します。
つまり、仕入れの際に支払った消費税は控除されます。これが「仕入税額控除」です。
10万円(B社から預かった消費税)− 5万円(仕入れ分の消費税)= 5万円(A社の消費税の納税額)
つまり、A社はこの「適格請求書」があることで、消費税の納税額が仕入れ時に支払った分少なくて済むという訳です。
※この場合、A社、B社、C社は全て「適格請求書」を発行できる消費税の「課税事業者」であることが前提です。
インボイス制度導入によるフリーランスの影響とは?

クライアント(顧客)側から見ると、フリーランスへの仕事の発注は「仕入れ」にあたります。クライアントからすれば、できるだけ自分たちに有利な仕入先を選択することは必須です。
前述の「適格請求書」は、消費税を納税している人や会社でなければ発行することはできません。
消費税の納税を免除されている「免税事業者」のフリーランスは、「適格請求書」を発行することはできません。
そうなると、クライアント側は消費税の納税額が少なくて済む「仕入税額控除」の特典を受けることができなくなります。
その結果、「適格請求書」を発行できない「免税事業者」であるフリーランスは下記の3つのデメリットがあります。
- クライアントから契約を打ち切られる→仕事が減る
- 消費税分の売り上げが減る→収入が減る
- 消費税分を差し引いた金額での契約を要求される→収入が減る
このようにインボイス制度は、フリーランスの収入にも直接関わってくるため、しっかりと理解しておく必要があるのです。
インボイス制度は「課税事業者」と「免税事業者」どちらがお得?
結局インボイス制度が適用されたら、フリーランスは「課税事業者」と「免罪事業者」どっちがお得なの?
ここでは2023年以降、「課税事業者」と「免税事業者」それぞれフリーランスとして仕事を続ける場合、どちらがお得なのか?詳しく解説します。
課税事業者と免税事業者
課税事業者と免税事業者の特徴は、次のとおりです。
課税事業者 「適格請求書発行事業者の登録申請書」提出済 | ・前々年度の課税売上高1,000万円以上 ・消費税の納税義務がある ・インボイスを発行できる |
免税事業者 | ・前々年度の課税売上高1,000万円以下 ・消費税の納税義務なし ・インボイスを発行できない |
両者の大きな違いは、消費税を納税するかしないかによって、クライアントから要求される「適格請求書」を発行できるかできないか、になります。
もしクライアントが「課税事業者」である企業が多いフリーランスならば、「課税事業者」を選択することを考慮する必要があります。
逆に個人のクライアントが多いフリーランスならば、クライアント側も「免税事業者」である場合も多いので、「免税事業者」のままでもいいことが考えられます。
「免税事業者」で仕事を続ける場合
まず考えられるのは、仕事が減る可能性があることです。
クライアントが求める「適格請求書」を発行できない免税事業者のフリーランスは、契約を打ち切られる可能性が高いです。
また、控除できない消費税分の報酬が減らされる可能性も出てきます。これは、クライアントが課税事業者である企業に限られます。
クラウドソーシングサイトから仕事を受注しているフリーランスについても、大きな影響がありそうです。
クライアント側は、「仕入税額控除」のメリットがある課税事業者へ「直接」発注していく方向にシフトしていく可能性があるので、クラウドソーシングサイトへの発注が減ることが考えられます。
つまり、クラウドソーシングサイト側も仕事(収入)が減る可能性も出てきます。
クラウドソーシングサイトはそれを回避するために、クライアント(発注者)にデメリットを負わせることは考えにくいのです。そのため、クラウドワーカー(フリーランス)側への手数料負担が増加する可能性も考えられます。
やはり免税事業者で仕事を続ける場合、フリーランス側の収入が減ることに直結してくると考えるべきでしょう。
- 収入が下がる覚悟でそのまま仕事を続ける。
- 仕事も減る可能性が高いので万全の備えをしておく。
- クラウドソーシングのみを利用している場合は、他の案件受注先やクライアントを探しておく。
「課税事業者」になって仕事を続ける場合
もし「課税事業者」になる選択をすれば、前述のようなデメリットからは全て解放されます。
元々仕事が不安定なフリーランスとって、このインボイス制度の導入はさらなる不安材料が増えることになることは必須です。
今まで通りに仕事を進めていくためには、「課税事業者」になるための準備を進めていく必要があります。
消費税の納税義務が発生しますが、免税事業者で続けるよりはリスクが低いと言えます。
課税事業者になるための手続きは、次の通りです。
①「適格請求書発行事業者」の登録申請
2023年10月1日(令和5年10月1日)から課税事業者となるためには、2023年3月31日(令和5年3月31日)までに、「適格請求書発行事業者」の登録申請をする必要があります。
②「消費税課税事業者選択届出書」の提出
「消費税課税事業者選択届出書」は、消費税の免税事業者が課税業者になるために提出する書類です。
消費税課税事業者選択届出書は、国税庁のホームページから入手できます。
「課税事業者」と「免税事業者」のメリット・デメリット

ここまでのおさらいとして、課税事業者と免税事業者のメリット・デメリットをまとめました。
インボイス制度開始後 | メリット | デメリット |
課税事業者 | ・「適格請求書」を発行できる ・仕事や収入が減る不安から解消される | ・消費税の納税義務が発生する ・消費税の確定申告の手間が増える |
免税事業者 | ・消費税の納税は免除される ・消費税の確定申告は不要 | ・「適格請求書」が発行できない ・仕事や収入が減る可能性がある |
インボイス制度が導入されたら、「課税事業者」か「免税事業者」として働くかのどちらかを選択する必要があります。
どちらにもメリットデメリットがありますので、すぐには決められない人も多いでしょう。
「課税事業者」の場合、消費税は10%と決して安いものではありません。
導入まではまだ時間がありますので、じっくり検討されることをおすすめします。
まとめ
ここでは、フリーランスに直接影響のあるインボイス制度について、わかりやすく解説しました。
インボイス制度は2023年の導入とはいえ、「課税事業者」となることを選択した場合には、その半年前までには登録申請を済ませておく必要があります。
ただし「課税事業者」になったからといって、仕事が減ってしまう不安が全て解消されるという訳ではありません。
仕事や収入が不安定と言われるフリーランスは、クライアント側の他の都合によっても契約打ち切りになることも十分考えられます。
さらなるスキルアップや働き方、仕事の受注の仕方を常に考えておく必要があります。