なぜデータの暗号化が必須なのか?情報漏洩を防ぐための第一歩

2025年4月30日水曜日

セキュアコーディング

「データの暗号化は必須だって聞くけど、実際どうなの?」って思いますよね。正直、面倒くさいと感じる人もいるかもしれません。

今の時代、ウェブサービスやアプリを開発する上で、データの暗号化を無視するのは、まるで玄関の鍵をかけずに外出するようなものなんです。

サイバー攻撃の手口はどんどん巧妙になっていて、いつあなたのサービスが狙われるかわかりません。もし顧客情報や会社の機密データが漏れたら…想像するだけでも冷や汗が出ますよね。

この記事では、なぜデータの暗号化が絶対に欠かせないのか、その理由から、セキュアコーディングの観点も踏まえた実践方法まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

この記事で学べること

  • データの暗号化がなぜ必須なのか、その背景が理解できます。
  • 暗号化の基本的な仕組みがイメージできるようになります。
  • どんなデータを優先して暗号化すべきか判断できるようになります。
  • 安全に暗号化を実装するためのセキュアコーディングのコツが掴めます。

読み終わる頃には、「なるほど、だから暗号化が必要なのか!」と納得し、セキュリティ対策に自信を持って取り組めるようになっているはずです。

なぜ今データの暗号化が必須と言われるのか?

個人情報保護法とデータ暗号化の関係

「法律とかよく分からないし…」と思うかもしれませんが、実はデータの暗号化は法律、特に個人情報保護法とも深く関わっています

この法律では、個人情報を取り扱う事業者に対して、情報を安全に管理するための措置を求めているんです。

具体的に「暗号化しなさい」と全てのケースで義務付けているわけではないものの、ガイドラインなどでは、情報漏洩が起きた際のリスクを低減するための有効な手段として、暗号化が強く推奨されています。

つまり、もし個人情報が漏洩してしまった場合、適切な暗号化対策をしていなかったとなると、「安全管理措置を怠っていた」と判断され、厳しいペナルティを受ける可能性があるというわけです。法令遵守の面からも、暗号化は避けて通れない対策になっています。

情報漏洩が引き起こす甚大な被害とは

もし、あなたのサービスからデータが漏洩してしまったら、どうなるでしょうか?

まず考えられるのは、顧客からの信頼を完全に失うことです。「あのサービスは危ない」という評判が広まれば、ユーザーは離れていき、新しい顧客を獲得するのも難しくなるでしょう。

それだけではありません。被害者への損害賠償、原因調査や対策にかかる費用、場合によっては行政からの罰金など、金銭的なダメージも計り知れません。

さらに、ブランドイメージの低下は深刻で、事業の継続自体が危うくなるケースだってあります。暗号化を怠ったばかりに、取り返しのつかない事態を招く可能性があるのです。

セキュアコーディングにおける暗号化の位置づけ

セキュアコーディングというのは、簡単に言うと、攻撃者に悪用される隙(脆弱性)がないように、安全なプログラムコードを書くための考え方や技術全体のことです。

その中でも、データの暗号化は、情報を守るための基本中の基本であり、非常に核となる部分を占めています。

たとえるなら、家を建てるときに、ドアや窓にしっかり鍵を取り付けるようなものです。いくら立派な家を建てても、鍵がなければ泥棒に入られてしまいますよね。

同じように、どんなに便利な機能を持つサービスを作っても、データが守られていなければ意味がありません。セキュアコーディングを実践する上で、データ暗号化は絶対に外せない要素なのです。

データの暗号化とはそもそも何か基本を理解しよう

さて、「暗号化」という言葉はよく聞くけれど、具体的に何をしているのか、いまいちピンとこない人もいるかもしれません。

すごく簡単に言うと、元のデータ(平文)を、特別なルール(アルゴリズム)と鍵を使って、意味の分からない文字列(暗号文)に変換することです。

例えば、友達と秘密のメッセージを交換するときに、二人だけが知っているルールで文字を入れ替える、みたいなイメージですね。

暗号化されたデータは、正しい鍵を持っていない限り、元の意味を知ることができません。そして、正しい鍵を使えば、暗号文を元のデータに戻すこと(復号)が可能です。
この「鍵」というのが、暗号化・復号のプロセスで非常にカギとなる役割を果たします。

暗号化の仕組みを簡単に解説共通鍵と公開鍵

暗号化には、大きく分けて2つの方式があります。「共通鍵暗号方式」と「公開鍵暗号方式」です。なんだか難しそうですが、仕組みは意外とシンプルですよ。

共通鍵暗号方式
これは、暗号化するときと復号するときに、まったく同じ鍵を使う方式です。イ

メージとしては、家の鍵のようなもの。開けるのも閉めるのも同じ鍵ですよね。仕組みがシンプルで処理速度が速いのがメリットですが、相手に安全に鍵を渡す方法を考える必要があります。

【共通鍵暗号方式のイメージ】

あなた ----- (同じカギ🔑) -----> 受信者
         ↑                    |
         |-----(同じカギ🔑)-----| データ (暗号化/復号)

公開鍵暗号方式
こちらは、暗号化する鍵(公開鍵)と、復号する鍵(秘密鍵)がペアになっている方式です。公開鍵は誰にでも公開してOK。データを受け取りたい人は、自分の公開鍵を相手に渡します。

相手はその公開鍵でデータを暗号化して送ります。暗号化されたデータは、ペアになっている秘密鍵を持っている本人しか復号できません。鍵の受け渡しが安全なのがメリットですが、処理速度は共通鍵方式に比べて遅めです。

【公開鍵暗号方式のイメージ】

あなた --(受信者の公開カギ🔒で暗号化)--> 受信者 --(自分の秘密カギ🔑で復号)--> データ解読
          (公開鍵は誰でも入手可能)        (秘密鍵は本人だけが持つ)

実際には、この二つを組み合わせて使うことが多いです。例えば、安全に共通鍵を交換するために公開鍵暗号方式を使い、実際のデータのやり取りは高速な共通鍵暗号方式を使う、といった具合です。SSL/TLS通信(ウェブサイトのHTTPS化)などがこの仕組みを使っています。

ハッシュ化との違いは何か

暗号化とよく似た言葉に「ハッシュ化」があります。これもデータを変換する技術ですが、目的と性質が全く違います。

暗号化は、後で元に戻す(復号する)ことを前提としていますが、ハッシュ化は基本的に元に戻せない一方向の変換です。

ハッシュ化は、どんな長さのデータからでも、固定長の短いデータ(ハッシュ値)を生成します。元のデータが少しでも変わると、生成されるハッシュ値は全く異なるものになります。この性質を利用して、主に以下の目的で使われます。

  • データの完全性チェック
    ファイルが改ざんされていないかを確認する。
  • パスワードの保存
    パスワードそのものではなく、ハッシュ値を保存しておく。

パスワードを保存する際に暗号化ではなくハッシュ化が使われるのは、万が一データが漏洩しても、元のパスワードを知られないようにするためです。

ログイン時には、入力されたパスワードをハッシュ化し、保存されているハッシュ値と一致するかどうかで認証を行います。暗号化とハッシュ化、それぞれの役割を理解して使い分けることが、セキュアコーディングの第一歩ですよ。

どんなデータの暗号化が必須?対象を見極めよう

「データの暗号化は必須」と言っても、システム内の全てのデータを片っ端から暗号化すれば良い、というわけでもありません。

もちろん、できる限り多くのデータを暗号化するに越したことはないですが、暗号化・復号には処理コストがかかりますし、管理も複雑になります。

そこで、どのデータを優先的に暗号化すべきか、リスクに基づいて判断することが求められます。

漏洩した場合に影響が大きいデータ、法律で保護が求められているデータなどを特定し、そこから優先的に対策を進めるのが現実的です。やみくもに暗号化するのではなく、守るべき対象をしっかり見極めましょう。

絶対に暗号化すべき重要データの例

では、具体的にどんなデータを優先して暗号化すべきでしょうか?一般的に、以下のデータは漏洩した場合のリスクが非常に高いため、暗号化が強く推奨されます。

あなたの扱っているデータにこれらが含まれていないか、チェックしてみてください。

  • 個人情報
    氏名、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日、マイナンバーなど、個人を特定できる情報。
  • 認証情報
    パスワード(※通常はハッシュ化)、APIキー、アクセストークン、秘密鍵など、システムへのアクセスに使われる情報。
  • 決済情報
    クレジットカード番号、有効期限、セキュリティコード、銀行口座情報など、金銭に関わる情報。
  • 機密情報
    企業の内部情報、開発中のソースコード、非公開の顧客リスト、医療情報など、外部に漏れると重大な問題を引き起こす情報。

これらの情報が暗号化されずに保存されていたり、通信されたりしている状態は、非常に危険です。

まずは、これらの重要データから優先的に暗号化対策を進めましょう。

どこで暗号化を行うべきか通信時と保存時

データを暗号化するといっても、どのタイミングで暗号化するかが課題になります。データは、大きく分けて二つの状態にあると考えられます。

ひとつは、ネットワーク上をデータが移動している「通信時(in transit)」です。例えば、ユーザーがウェブサイトにログイン情報を入力し、それがサーバーに送られる間などが該当します。この通信経路が暗号化されていないと、途中でデータを盗み見(盗聴)される可能性があります。

この対策としてよく使われるのがSSL/TLS(HTTPS通信)です。ブラウザのアドレスバーに鍵マークが表示されているサイトは、この通信時暗号化が行われています。

もうひとつは、データがデータベースやファイルストレージなどに保管されている「保存時(at rest)」です。サーバー自体に不正アクセスされたり、データベースのバックアップファイルが流出したりした場合に備える必要があります。

この対策としては、データベースの特定の列を暗号化したり、ディスク全体を暗号化したりする方法があります。

通信時と保存時、両方のデータ保護を考えることがセキュアコーディングでは不可欠です。片方だけ対策しても、もう片方から漏洩するリスクが残ってしまいます。

セキュアコーディング実践データの暗号化実装のポイント

さあ、いよいよ実践編です!データの暗号化の必要性や基本は理解できたところで、実際にプログラムコードを書く際に、どうすれば安全に暗号化を実装できるのか、そのポイントを見ていきましょう。

「データの暗号化は必須」であり、ただ暗号化すれば良いのではなく、その実装方法自体が安全でなければ意味がありません。脆弱な実装は、かえって新たなリスクを生む可能性すらあります。

ここでは、セキュアコーディングの観点から、特に注意すべき点をいくつか紹介します。これを押さえておけば、より安全なデータ保護が実現できますよ。

安全な暗号化ライブラリの選び方と使い方

暗号化の仕組みは非常に複雑で、専門家でも完全に理解し、安全に実装するのは難しいものです。

ですから、絶対に自分で暗号アルゴリズムを実装しようとしないでください。これは「車輪の再発明」と呼ばれる、やってはいけないことの代表例です。自作の暗号は、ほぼ間違いなく脆弱性を抱えています。

代わりに、プログラミング言語やフレームワークが提供している、信頼できる標準的な暗号化ライブラリやAPIを利用しましょう。これらのライブラリは、多くの専門家によって検証され、広く使われている実績があります。

ライブラリを選ぶ際は、以下の点を確認すると良いでしょう。

  • 広く使われており、実績が豊富か。
  • 現在も活発にメンテナンスされているか。
  • 脆弱性が見つかった場合に、迅速に対応されるか。
  • 推奨されるアルゴリズム(例 AES-GCM)をサポートしているか。

ライブラリを使う際も注意が必要です。アルゴリズムの選択(今はAESが主流)、鍵の長さ(AESなら256ビット推奨)、暗号化モード(GCMなど認証付き暗号が推奨)、初期化ベクトル(IV)の適切な生成と管理など、ライブラリのドキュメントをよく読み、推奨される安全な使い方に従うことが肝心です。

// あくまでイメージです(特定の言語に依存しない疑似コード)

// --- やってはいけない例 ---
// function myOriginalEncrypt(data, key) {
//   // ... 独自に考えた怪しいアルゴリズム ...
//   return encrypted;
// }

// --- 推奨される例 ---
// 信頼できるライブラリを使う
#include <openssl/evp.h> // 例 C言語 OpenSSLライブラリ

function secureEncrypt(plainData, key, iv) {
  // ライブラリが提供する安全な関数を呼び出す
  // 例 EVP_EncryptInit_ex, EVP_EncryptUpdate, EVP_EncryptFinal_ex
  // (実際の実装はもっと複雑です)
  encryptedData = StandardLibrary.encrypt("AES-256-GCM", plainData, key, iv);
  return encryptedData;
}

// 鍵やIVも安全に生成・管理する必要がある
key = SecureKeyGenerator.generate(256);
iv = SecureRandomGenerator.generateBytes(12); // GCMモードではIVは96ビット(12バイト)が推奨

【超重要】暗号鍵の安全な管理方法

どんなに強力な暗号アルゴリズムを使っても、それを解くための「鍵」が漏れてしまったら、全く意味がありません。金庫が頑丈でも、鍵をドアマットの下に隠していたら泥棒に入られてしまいますよね。

暗号化の安全性は、鍵の管理にかかっていると言っても過言ではありません。これがセキュアコーディングにおいて、おそらく最も難しい課題の一つです。

鍵の管理で絶対にやってはいけないのは、ソースコードの中に鍵を直接書き込むこと(ハードコーディング)です。ソースコードはバージョン管理システムなどを通じて、意図せず漏洩するリスクがあります。

では、どうすれば安全に鍵を管理できるのでしょうか?ベストプラクティスとしては、以下のような方法があります。

  • 設定ファイルや環境変数に記述する
    ソースコードとは分離して管理する。ただし、これらのファイルへのアクセス権限を適切に設定する必要がある。
  • 鍵管理システム(KMS)を利用する
    AWS KMSやGoogle Cloud KMSなどのクラウドサービス、あるいはHashiCorp Vaultのような専用ツールを使う。鍵の生成、保管、アクセス制御、ローテーションなどを安全に行う機能を提供してくれる。
  • ハードウェアセキュリティモジュール(HSM)を利用する
    物理的なデバイスで鍵を保護する、最も安全性の高い方法の一つ。コストは高め。

どの方法を選ぶかは、システムの要件や規模、コストによって異なりますが、少なくともソースコードへのハードコーディングは絶対に避け、鍵へのアクセス権限を最小限に絞ることが基本です。

鍵の生成方法(十分なランダム性を持つか)、定期的な鍵の更新(ローテーション)、不要になった鍵の安全な破棄といった、鍵のライフサイクル全体を通じた管理計画も考慮に入れましょう。

【まとめ】データの暗号化は必須セキュアな開発のために

さて、ここまでデータの暗号化がなぜ必須なのか、そしてセキュアコーディングの観点からどのように実装すべきかを見てきました。長い道のりでしたが、お疲れ様でした!

もう一度、この記事のポイントを振り返ってみましょう。

  • 暗号化は必須:法律、信頼、ビジネス継続性の観点から、もはや避けて通れない。
  • 基本を理解暗号化・復号、共通鍵・公開鍵、ハッシュ化との違いを知る。
  • 対象を見極める個人情報や認証情報など、リスクの高いデータから優先的に対策する。
  • 通信時と保存時データが動いている時も、止まっている時も保護が必要。
  • 安全な実装信頼できるライブラリを使い、設定を間違えない。
  • 鍵管理が最重要鍵の漏洩は暗号化を無意味にする。ソースコードへのハードコーディングは絶対にNG。

データの暗号化は、セキュアコーディングの入り口であり、土台となる部分です。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、基本を押さえて、信頼できるツールを正しく使えば、決して特別なことではありません。

この記事を読んで、「よし、自分のサービスもチェックしてみよう!」と思っていただけたら嬉しいです。まずは、扱っているデータの中に暗号化が必要なものが含まれていないか確認することから始めてみてください。

そして、安全なライブラリの使い方や、鍵の管理方法について、さらに学習を進めていきましょう。セキュアな開発は、あなたとあなたのユーザーを守るための、地道ですが非常に価値のある取り組みです。

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リモートワークでエンジニア兼Webディレクターとして活動しています。プログラミングやAIなど、日々の業務や学びの中で得た知識や気づきをわかりやすく発信し、これからITスキルを身につけたい人にも役立つ情報をお届けします。 note → https://note.com/yurufuri X → https://x.com/mnao111

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