失敗しない推論エンジンの選定、AIプロジェクトを成功に導くための選び方、気になりませんか?
この記事では、AIモデルを実際に動かす心臓部とも言える「推論エンジン」について、その基本から、あなたのプロジェクトにピッタリのものを選ぶための具体的なステップ、そして「あちゃー!」とならないための秘訣まで、しっかりお伝えします。
この記事で学べること
- 推論エンジンって何?がスッキリわかる
- 推論エンジンを選ぶときの超重要なポイントがわかる
- 代表的な推論エンジンの特徴と、どれが自分に合うかが見えてくる
- 推論エンジン選びでよくある失敗とその回避方法がわかる
推論エンジンとは何か?基本から理解しよう
さて、まず「推論エンジン」って一体何者なの?というところからお話ししましょう。難しく考えなくて大丈夫ですよ!
皆さんが丹精込めて育て上げたAIモデル、例えば「この画像はネコかな?イヌかな?」と判断できるようになった賢いAIがいるとします。このAIモデルが、実際に新しい写真を見せられたときに「これはネコだ!」と判断する、その「判断する」という賢い働きを実行するのが「推論エンジン」の役割なんです。
もう少しだけ専門的な言い方をすると、AIモデルは学習データを使って「こういう特徴があったらネコだよ」というパターンを学びますよね。そして、未知のデータ(新しい写真)が来たときに、学んだパターンを当てはめて答えを出す。
この「答えを出す」プロセスを「推論」と呼びます。推論エンジンは、この推論プロセスを効率よく、そして高速に実行するための専門ソフトウェア、いわばAIモデルの実行役、ってわけです。
なぜ推論エンジンの選定がそんなに大事かというと、選んだエンジンによってAIの反応速度が変わったり、使える機能に制限が出たり、最悪の場合、せっかく作ったAIモデルがうまく動かせない…なんてことにもなりかねないからです。
だからこそ、最初のエンジン選びが肝心なんですね。
間違いない推論エンジンの選定5つの重要ポイント
推論エンジンを選ぶとき、ただ「これが人気らしいから」なんて理由で決めちゃうのはちょっと待った!しっかり押さえておきたい、選定のための重要なポイントがあります。
これを知っておけば、後で頭を抱える事態を避けられるはずです。
ポイント1:対応フレームワークの互換性を確認する
AIモデルを作るのには、TensorFlow(テンソルフロー)やPyTorch(パイトーチ)といった「機械学習フレームワーク」と呼ばれる道具立てを使います。せっかく作ったAIモデルも、動かす推論エンジンがそのフレームワークに対応していなかったら、絵に描いた餅、ですよね。
もちろん、モデルの形式を変換すれば使えるようになることもありますが、変換作業に手間がかかったり、最悪の場合、変換によってAIの賢さ(精度)が少し落ちてしまったりすることも。
だから、まずはお使いの、あるいはこれから使う予定の機械学習フレームワークと相性の良い推論エンジンを選ぶのが基本中の基本です。例えば、TensorFlowで作ったモデルなら、同じGoogle製のTensorFlow Servingとの相性はバッチリ、といった具合です。
ポイント2:パフォーマンス(速度と精度)を比較検討する
推論エンジンを選ぶ上で、パフォーマンスはめちゃくちゃ気になるところですよね。ここで言うパフォーマンスとは、主に「推論の速さ」と「AIの賢さ(精度)」のこと。そして、推論エンジンを動かすのにどれだけコンピュータの力(メモリとか)を使うか、という点も含まれます。
例えば、AIチャットボットみたいに、ユーザーからの問いかけにパッと答えてほしいサービスなら、反応の速さ(レイテンシと言います)が命。一方で、大量のデータをまとめて処理するような場合は、単位時間あたりにどれだけ多くのデータをさばけるか(スループットと言います)が重要になってきます。
あなたのAIサービスがどんな使われ方をするのかを考えて、どのパフォーマンスを優先するかを見極めるのがコツです。精度についても、エンジンによっては少し扱いが変わることもあるので、しっかり確認しましょう。
ポイント3:デプロイ環境(クラウドエッジモバイル)に適しているか
作ったAIモデルを、実際にどこで動かすのか。これも推論エンジン選びの大事な判断基準です。
大規模なサーバーがたくさんあるクラウド環境で動かすのか、それともお店の片隅に置く小さな専用機(エッジデバイスって言います)や、皆さんがお持ちのスマートフォン(モバイル端末)で動かすのか。動かす場所によって、求められる推論エンジンの性格も変わってきます。
例えば、エッジデバイスやモバイル端末でAIを動かしたいなら、エンジン自体が軽くて、少ない電力でサクサク動いてくれるものが理想ですよね。クラウドならパワーはありますが、その分コストも気になるところ。このように、AIを活躍させたい場所の特性をしっかり考えて、それに合った推論エンジンを選びましょう。
ポイント4:ライセンスとコスト体系を把握する
推論エンジンには、誰でも自由に使えるオープンソースのものと、企業が提供している商用のものがあります。オープンソースだからといって何でもOKというわけではなく、使い方によっては制限があったり、商用利用の際には注意が必要なライセンス形態もあります。
商用のものは、もちろん利用料がかかってきますが、その分、手厚いサポートが受けられたり、便利な機能がてんこ盛りだったりすることも。
無料か有料かだけでなく、将来的な運用コストや、どんなサポートが必要になりそうかまで考えて、トータルで判断するのが賢いやり方です。目先の費用だけで飛びつくと、後で「こんなはずでは…」となりかねませんよ。
ポイント5:コミュニティとサポート体制を調べる
いざ推論エンジンを使い始めてみると、予期せぬエラーが出たり、「これってどうやるの?」と疑問が出てきたりするのは、ある意味お約束です。そんなとき、頼りになるのが開発元のサポート体制や、ユーザー同士で情報交換できるコミュニティの存在。
特にITの世界に足を踏み入れたばかりの方にとっては、ドキュメント(説明書)がどれだけ分かりやすいか、日本語の情報がどれくらいあるか、質問したら誰か答えてくれる雰囲気があるか、といった点は、安心して開発を進めるための生命線とも言えます。
マイナーすぎるエンジンを選んでしまうと、情報が少なくて困ってしまう…なんてことも。多くの人が使っていて、情報交換が活発なエンジンを選ぶのも、一つの賢い選択です。
あなたに合うのはどれ?主要な推論エンジンの特徴と比較
さて、ここまで推論エンジンを選ぶときのポイントを見てきました。ここからは、じゃあ具体的にどんな推論エンジンがあって、それぞれどんな特徴があるの?というお話をしましょう。
いくつか代表的なものをピックアップして、それぞれの得意なことや、どんな人に向いているのかを見ていきましょう!
「TensorFlow Serving」Google製の堅牢な選択肢
TensorFlow Serving(テンソルフロー サービング)は、あのGoogle先生が作っている推論エンジンです。名前の通り、TensorFlowで作ったAIモデルを動かすのに特化しています。
一番のウリは、やっぱりGoogle製という安心感と、大規模なサービスでも安定してAIを動かせるタフさでしょうか。
たくさんのユーザーが一斉にアクセスしてくるようなサービスでも、へこたれずにAIの応答を返し続ける力があります。TensorFlowをメインで使っている、あるいはこれから使おうと思っている方で、特に安定性や処理能力を重視するなら、まず検討したい選択肢の一つです。
設定が少し複雑に感じるかもしれませんが、その分、細かく動きを調整できるのも魅力ですよ。
「TensorRT」NVIDIA GPU環境での高速化ならこれ
TensorRT(テンサー アールティー)は、グラフィックボード(GPU)で有名なNVIDIA社が提供している推論エンジンです。その名の通り、NVIDIA製のGPU上でAIモデルをめちゃくちゃ速く動かすことに特化しています。
もしあなたのAIプロジェクトでNVIDIAのGPUを使っていて、とにかくAIの応答速度を極限まで高めたい!という野望があるなら、TensorRTはまさにうってつけ。AIモデルの計算方法をGPUが得意な形に最適化してくれたり、計算の精度を少し調整することで爆速化したり(量子化って言います)する機能を持っています。
リアルタイムでの画像認識や、自動運転技術など、一瞬の遅れも許されないような分野で大活躍しています。ただし、NVIDIAのGPUが必須になる点には注意が必要ですね。
「OpenVINO」IntelCPU/GPU環境での最適解
OpenVINO(オープンビーノ)は、パソコンの頭脳(CPU)でおなじみのIntel社が開発しているツールキットで、その中に推論エンジンも含まれています。Intel製のCPUはもちろん、Intelの内蔵GPUや専用のAIアクセラレーターなど、IntelのハードウェアでAIを効率よく動かすことを目指しています。
特に、お店のレジ横に置くような小型のAI端末(エッジデバイス)や、工場のラインで使う検査装置など、Intelのチップがたくさん使われている場所でAIを活用したい場合に強みを発揮します。
TensorFlowやPyTorchなど、いろんなフレームワークで作ったAIモデルをOpenVINOで動かせるように変換する機能も持っていて、意外と守備範囲が広いのも特徴です。Intelのハードウェアをフル活用したいなら、ぜひチェックしてみてください。
「ONNX Runtime」クロスプラットフォームの標準を目指す
ONNX Runtime(オニキス ランタイム)は、Microsoftが中心となって開発している、ちょっと面白い立ち位置の推論エンジンです。ONNXというのは、いろんな機械学習フレームワークで作ったAIモデルを、共通の形式で保存したり交換したりするためのフォーマットのこと。
ONNX Runtimeは、このONNX形式のAIモデルを、いろんな種類のハードウェア(CPU、GPUなど)やOS(Windows、Linux、Macなど)の上で効率よく動かすことを目指しています。
つまり、「どのフレームワークで作ったモデルでも、どんな環境でも、とりあえずONNXにしとけば動かせるぜ!」という世界観。
特定の会社の色に染まりたくない、いろんな技術を組み合わせて使いたい、という自由な発想を持つあなたには、ONNX Runtimeがピッタリかもしれません。多くのハードウェアメーカーも対応を表明していて、これからの発展が楽しみなエンジンの一つです。
初心者が陥りがちな推論エンジン選定の罠と回避策
ここまでいろいろお話ししてきましたが、推論エンジン選びって、慣れていないとついついハマってしまう落とし穴がいくつかあるんです。「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないために、先輩たちがよく踏んでしまった轍(わだち)から学んでいきましょう!
例えば、こんな失敗談、聞いたことありませんか?
- 最新技術にすぐ飛びついちゃう
新しいもの好きはエンジニアの性(さが)かもしれませんが、出たばかりの推論エンジンは情報が少なかったり、まだ不安定だったりすることも。実績のあるエンジンと比べて、本当にその新しさが必要なのか、冷静に考えてみましょう。 - パフォーマンスの数字だけを信じすぎる
「このエンジン、〇〇倍速い!」みたいな宣伝文句、魅力的ですよね。でも、その数字がどんな条件で出たものなのか、自分の環境でも同じ結果になるのかは別問題。実際に自分のAIモデルで試してみるのが一番確実です。 - 説明書を読まずにフィーリングで導入
なんとなくで進めて、途中で「あれ?動かない…」となっても後の祭り。急がば回れ、基本的な使い方は最初にしっかり押さえておきましょう。 - 自分のAIモデルとの相性を考えない
いくら評判の良いエンジンでも、あなたのAIモデルの種類や複雑さに合っていなければ、宝の持ち腐れ。まずは自分のAIモデルの特徴を理解することが先決です。
これらの罠を避けるためには、焦らず、情報を集め、そして実際に手を動かして試してみる、という地道なステップが結局は近道だったりします。周りの意見も参考にしつつ、最後は自分の目で確かめるのが大事ですよ。
【まとめ】最適な推論エンジンを選定してAI開発を加速させよう
さあ、ここまで推論エンジンの選定について、基本から具体的なエンジンの紹介、そして注意点まで、盛りだくさんでお届けしてきました。
AIプロジェクトを成功させるためには、AIモデルを作るのと同じくらい、いや、もしかしたらそれ以上に、どの推論エンジンを選ぶかがカギを握っている、ということが少しでも伝わったら嬉しいです。
最後に、この記事で学んだことを活かして、あなたが次にとるべきアクションを整理しておきましょう。
- あなたのAIプロジェクトの目的や要件(どんなAI?どこで動かす?速さはどれくらい必要?)をもう一度ハッキリさせる。
- 今日紹介した選定ポイントを参考に、候補となる推論エンジンをいくつかリストアップしてみる。
- それぞれの候補について、メリット・デメリットを比較し、自分のプロジェクトに一番合いそうなものに絞り込む。
- できれば、簡単なAIモデルで実際にその推論エンジンを試してみて、使い勝手やパフォーマンスを体感してみる(PoC:概念実証って言います)。
推論エンジンの世界は奥が深く、新しい技術もどんどん出てきます。でも、基本となる考え方は変わりません。
この記事が、あなたのAI開発を少しでもスムーズに進めるためのお役に立てたなら、これ以上嬉しいことはありません。自信を持って、あなたのAIモデルにピッタリの推論エンジンを選んで、プロジェクトを成功に導いてくださいね!
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